第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
「私、煉獄さんのあんな顔初めて見ちゃった!胸のトキメキが止まらないわ!」
恋柱様のそんな言葉に
「あんな…顔…ですか?」
私は思わず首を傾げてしまう。恋柱様は私の問いににっこりと微笑むと
「荒山さんの話をする煉獄さんの顔、"恋する青年"って感じだったわ」
先程よりも声を落とし、吐息混じりの囁くような声でそう言った。
思ってもみない恋柱様の言葉に
「…っ…そう…なんですか…?」
私の頬が僅かに熱を帯びた。
「えぇ!私、煉獄さんの師範としての顔しか知らなかったから、すごく驚いちゃった。煉獄さん、荒山さんのことが大好きなのね!」
小声ながらも興奮した様子でそう言ってきた恋柱様に
「…っ…そんなこと…ないと思います…」
私は恥ずかしさで震えそうになる声を抑えながらそう答えた。
「…っ恥ずかしがっている荒山さん…とっても可愛いわ!」
「っそんなことありません!私のことを可愛いなんていうのは杏寿郎さんくらいで…」
そこまで口に出してから
…ちょっと待って!今の言い方だと、杏寿郎さんが私のことを可愛いって言ってくれてると教えてるようなもんじゃない…!
自らの恥ずかしい発言に気がつき、ムッと言葉の途中で口を噤んだ。けれどもそんなものは後の祭りで
「…煉獄さん…荒山さんのことを可愛いって…言っているのね!何それ何それ素敵すぎるわ!」
恋柱様は目をキラキラさせ、明後日の方向を見ながらそう言った。
…だめだ…最近本当に、頭が緩みきってる気がする…しっかり…しっかりするのよ私!
自分自身にそう言い聞かせ、気合を入れるようにパンパンと両頬を両手で叩いていると
「あらあら。なんだかとっても楽しそうですね」
恋柱様に、負けず劣らず可愛らしい声の持ち主
「しのぶさん!」「しのぶちゃん!」
ニコニコと穏やかな笑みを浮かべたしのぶさんが恋柱様の隣に立っていた。