第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
そんな恋柱様の様子に
……なんて…可愛らしい人なんだろう
急に親近感が湧いてくる。
綺麗な若草色の瞳が私の方へと遠慮がちに向けられ、私も失礼のないようにそれを見返した。その時
「そいつが宇髄の継子かァ?」
「…そんな弱そうな隊士を継子に選ぶとは、あいつの見る目は一体どうなっているんだ」
男性2人の声が、背後の方から聞こえてきた。その声に、先ほどまでの和やかな気持ちから一変し、私の中で一気に緊張感が増していく。
…この声は…風柱様と…蛇柱様だ…!
「不死川!伊黒!息災か?」
私のすぐ後ろにいた杏寿郎さんは、クルリと身を翻し並んで歩いてくる2人の方へと向かって行った。
杏寿郎さんが近づいて行ったことにより、私へと向けられていた風柱様と蛇柱様様の意識が杏寿郎さんの方へと方向を変え、思わずホッとしてしまう。
「荒山さん」
「…っ…はい!」
恋柱様に名前を呼ばれ、私は慌てて杏寿郎さん達の方へと向けていた身体を恋柱様の方へと向き直した。
恋柱様は、チラリと杏寿郎さんの方を見た後、再び私へと視線を戻した。それから何かこっそりと話すことでもあるのか、口に手を添えたまま、私へと顔を寄せてくる。
……だいぶ聞こえるようになったけど…聴き逃しちゃったら失礼だし、右耳の方にしてもらおう
「…すみません。左耳はまだ調子が完璧ではないので、こっちの方でお願いします」
私はそう言いながら、右耳をゆっくりと近づいてくる恋柱様の方へと向けた。
「あ!そう言えば、耳の調子が悪かったのよね?気がつかなくてごめんなさい」
「そんな!むしろ調子が良くない事を把握されていることが驚きです」
「上弦の陸との戦いの話は全部報告書で読んでるの!荒山さん、とっても活躍して、こんなに小さな身体ですごいわ!……っとそうじゃなかったわ!」
恋柱様は腕を上下に、顔を左右にぶんぶんと振った後、改めて私の右耳へと口元を寄せてきた。