第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
「わはは!活きのいい魚のようだ!」
けれども何が楽しいのか、杏寿郎さんは楽し気に笑っているだけで私を離してはくれないようだ。
…っこの人は本当にもぅ…!!!
段々と腹立たしくなってきてしまった私は
「っもう!いい加減にしてください!今日は大事な臨時の会議があるのでしょう!?」
結局、恋柱様の前にも関わらずいつもの調子で怒ってしまう。
「わはは!すまない!甘露寺に鈴音のことを紹介したいと常々思っていた故柄にもなくはしゃいでしまった」
杏寿郎さんはそう言いながら私の身体を地面へと降ろし、ゴソゴソと後頭部できつく縛ってあった目隠しを外してくれた。
一言文句を言わなければ気が済まないと思い、正面にある杏寿郎さんの胸板から視線をあげ顔を見たその時
「…っ…!」
視界に映り込んだのは、ニコニコと満面の笑みを浮かべている杏寿郎さんの幸せそうな顔だった。
…っ…そんな顔見せられたら…何も言えないよ…
文句の言葉はスッと何処かへと飛んでいってしまった。そしてなんとか絞り出した言葉は
「…出来るだけ…時と場所を…考えてくださいね?」
「わかっている!」
文句とはあまり言えなさそうな言葉で、杏寿郎さんに対して甘くなってしまう自分自身に苦笑いが溢れてしまう。
そんな私たちの様子に
「……いいわ」
恋柱様が、呟くような静かな声でそう言った。
私は声が聞こえてきた方…私の背後の方へとクルリと振り返り
「柱の前で失礼な態度を取ってしまい申し訳ございません。私は階級丙、荒山鈴音と申します」
姿勢を正し、恋柱様にご挨拶をさせてもらった。すると恋柱様は
「わ…私は恋柱の甘露寺蜜璃です!元々は煉獄さんの継子で、煉獄さんにはとってもお世話になってて、荒山さんにはずっと会ってみたいと思ってて…えっとえっと…あぁどうしよう!言いたいことがあり過ぎて全然纏まらないわ!」
ピンクに染まった頬に手を当て、ワタワタと慌てている様子だった。