第15章 強くなりたいと願うなら、前を向いて進め
慌てて杏寿郎さんの首から腕を離し、自分でも外すことの出来る耳栓を取り払い、その腕の中から急いで脱出しようとした。けれども
「…っ…煉獄さん…その子はもしかして…!」
聞こえてきた鈴のように可愛らしい声に、僅かな安心感を覚える。
……この声はきっと…恋柱様だ。恋柱様なら杏寿郎さんの元お弟子さんだし…とっても可愛くて優しい方だって聞いたこともあるし…こんな格好を見せてしまっても叱られることはないよね
そう思い至った私は
「先の会議ぶりだな!甘露寺!元気にしていたか?」
「はい!こんなにも早くまたみんなで集まれるなんて、私とっても嬉しいです!」
「そうだな!」
2人の会話を邪魔してしまうこともはばかれたこともあり、少し悩んだ末、一旦暴れるのをやめ、2人の会話に区切りが着くのを待つことにした。
「…っそれよりも煉獄さん!私!煉獄さんが大事そうに抱えてるその子が気になって気になって仕方ないんです!是非とも紹介してください!!!」
恋柱様のそんな質問に内心"まぁこの状態で気にならない方が不思議だよね"と心の中で思いつつ、やはり柱同士の会話に不躾に会話に参加することもできないため、自ら名乗りたいという気持ちをグッと抑え、杏寿郎さんがそうしてくれるのを待つことにした。
「こうして会うのは初めてだったな!この子は俺の恋人であり将来の伴侶である荒山鈴音だ!」
思いもよらぬ杏寿郎さんの爆弾発言に
「はぁ!?」
恋柱様の前であるにも関わらず、はしたない声を出してしまった。一方恋柱様はと言えば、杏寿郎さんのそれらの言葉に
「…っ恋人で…将来の伴侶…!!!」
なにやら興奮を抑えたような声で杏寿郎さんの言葉を反芻している。
黙っていたら何を言われるかわからないと思い
「…っ恋柱様の前で変なことを言わないで下さい!そして早く降ろしてください!」
結局口を挟んでしまい、一向に降ろしてくれる気配のない杏寿郎さんの腕の中でジタバタと暴れ今度こそ脱出を試みた。