第14章 秘薬を求めて※
…っ杏寿郎さんめぇ…!確かに思い出してみると何度も吸われていた気もするけど…まさかこんなに痕をつけてるなんて…いくらなんでもやり過ぎでしょう!?
そんな風に思いながらも、戸惑い以上に込み上げて来たのは嬉しさと、それからどうしようもない杏寿郎さんへの愛おしさだった。
私はきっともう、杏寿郎さんを好きになる前の私には戻れない。
愛される幸せ、愛する幸せ
相手に求められる幸せ、相手を求められる幸せ
必要とされる存在になれた幸せ
必要と思える相手が出来た幸せ
それらを知ってしまった。
咲き乱れる赤い痕を撫で、大好きな炎を思い浮かべると、私の心は温かな何かで満たされていくようだった。この温かさがなくなってしまうことなど、想像したくもない。
だからこそ
「……もっともっと…強くなるんだから」
より強い身体を、そして心を手に入れなければならない。
杏寿郎さんが私につけてくれた痕をひとつひとつ撫でた後、私は綺麗に洗われた隊服に急いで袖を通し湯殿を出た。
急足で部屋へと戻り襖を開けると、既に出発の準備が整っているのか、杏寿郎さんは着流し姿から隊服姿に変わっていた。
そんな姿に
…しまった…臨時の柱合会議があるって言ってたのに、のんびりしすぎちゃった…!
私は慌てて部屋へと足を踏み入れた。
「お待たせしてしまってすみません!」
「会議まであと4時間ほど時間がある。故に謝る必要はない」
杏寿郎さんはそう言いながら卓の上に置いていた日輪刀をベルトにさし、その後同じく卓の上にあった炎柱の羽織をバサリと羽織った。
「……」
なんだかその動作が無性に格好良く見えてしまい、私はじぃーっと杏寿郎さんを見つめてしまう。
杏寿郎さんはそんな私の様子が気になったのか
「どうかしたか?」
首をわずかに傾げ、私にそう尋ねて来た。