第3章 未知との出会い、騒音との再会
体裁きの訓練を受けるようになって一週間。
1つ、…2つ、…3つ、…4つ、…5つ、…これで…最後!
トスン
静かな着地音を立て、音を鳴らす事なく糸の外に出た私の手には6つの鈴。
「…上出来だな」
苦労したこの訓練も、ようやくこなせるようになった。
「余計な動きをしないことは、敵の意表をつくことにつながるのはもちろん、体力の消費も抑えることができる。糸がなくても、常にそのことを意識して動け。可能であれば日常生活でもそうしろ。それができるようになれば、お前はもう立派な忍だ!」
…だから私、忍になるために訓練してるんじゃないんだけど。
そう思いながらも
「はい!」
そう返事をする。そんな私に、
「凄いです!鈴音ちゃんは本当に忍の才能があります!」
須磨さんが満面の笑みを浮かべながら抱き着いてくる。
…うん。もう忍でもなんでも、褒められてるんならそれでいいや。
「おし!じゃあ邸に戻って…最後の訓練といくか」
「え?まだあったんですか?」
てっきり体裁きの訓練が最後だと思っていた私は、自分よりもかなり上にある天元さんの顔を見上げる。
「あぁ。だが最後のは訓練というよりも…そうだな、”座学”って言ったほうが正しいな。ほら!お前ら行くぞ」
そういってさっさと邸に戻っていく天元さんと
「あぁ!待ってくださいよぉ!天元様ぁ!」
それを追いかけていく須磨さん。
「…座学…か」
私にとって、座学を受けるというのは初めての経験で
一体何を教えてくれるんだろう
と胸がわくわくと沸き立つようだった。
座学はお茶とお茶菓子をつまみながら、雛鶴さん、まきをさん、須磨さんと私の4人で行われた。
天元さんは
”俺は用があるから出てくる”
と言ってどこかへ行ってしまった。
座学で私が教えられたのは、応急処置と、その際に使用することになる薬の使い方だ。怪我を負った際に使用する止血剤、増血剤、凝血剤。そして、毒を食らった時に使う解毒剤。他にも、麻痺症状を緩和する薬や、一時的に筋肉の働きを良くする増力剤などたくさんの薬があった。