第3章 未知との出会い、騒音との再会
「…すごい…本当に…鳴ってない」
須磨さんがしなやかに身体を動かしながら、1つ、また1つと鈴を取って行く。
けれども、最後の1つに手が届きそうになった時、
「…ひゃー!?!?」
ビーン
ピーン
バイーン
しゃらんしゃらん
何かにけつまずいた須磨さんの手が、足が、糸に触れ、辺りが一気ににぎやかになった。
どしゃりと盛大に転んだ須磨さんは、
「わぁぁぁん!せっかく完璧に終われそうだったのにぃぃぃ!」
とバタバタと手足を動かしながら泣いている。私はそんな須磨さんの姿を
…ちょっと…似てる…かも。
と、自分の弟弟子の姿を頭に思い浮かべながらじっと見ていた。
天元さんはそんな私の横をすり抜け
「ったく。しょうがねえなぁ」
と言いながら須磨さんの元へと向かっていった。
そんな天元さんの行動に、ふにゃりと可愛い笑顔を浮かべる須磨さん。そしてそんな須磨さんに呆れながらも、逞しい腕でぐっと須磨さんを起こしてあげる天元さん。
そんな二人の様子に
…愛し合うって…いいな
と思う自分が確かにいた。
そんな感情を抱いている自分に、私は戸惑い、隊服のズボンをギュッと握りしめた。
3つの訓練の中で、圧倒的にこの体裁きの訓練が難しかった。何度やっても糸は鳴るし、鈴は鳴るし、ちっとも上手くできないことに苛立ちすら感じた。
そんな私に向かって
”おいおい。そんなんじゃ立派な忍になれねぇぞ!”
と言い放った天元さんに
忍になりたいわけじゃないし!
思わず心の中で叫んでしまう程だった。