第14章 秘薬を求めて※
ひどい空腹がそう思わせている事もあるのかもしれないが、それを抜きにしたとしてもこの炊き込みご飯はとても美味しいものだった。
目をキラキラさせながらご飯を咀嚼し続けていると
「ほら!もっと食べるといい!」
杏寿郎さんが私のために再び炊き込みご飯をすくってくれる。そんな杏寿郎さんの行動に、私は当たり前のように口を開けご飯が口に入ってくるのを待つ。
…美味しい!すごく美味しい!
寝ていたことで食べ損ねた分を取り戻さんばかりにもぐもぐと食べ続けていると
「む?残念なことに空になってしまったようだ」
炊き込みご飯の入った椀は、あっという間に空になってしまった。
……本当に残念…もっと食べたかったのに
そんなことを考えながら最後の一口を大事に咀嚼していたが
「箸を差し出せばパクりと可愛らしい様子で食べに来る…まるで雛鳥に餌を与える親鳥になった気分だ」
杏寿郎さんのそんな言葉に、私は咀嚼していたご飯を急いで飲み込んだ。
…私ったら…杏寿郎さんにあんな風に食べさせてもらって…しかもそれが当たり前みたいな感覚になってるなんて…!
「…っ…すみません…!」
自分が一体何をしていたのか自覚した私は、大慌てで杏寿郎さんに謝罪を述べる。
「こちらも謝る必要はない!むしろもっと食べさせてやりたいと思っている!」
杏寿郎さんはそう言い終えるや否やスッと立ち上がり
「鈴音の分の食事と、俺のお代わりをもらいに行ってくる!少し待っていてくれ!」
スタスタと急足で廊下に続くと思われる襖の方へと向かって行く。サッと襖を開け部屋の外に出ると、私の方へと振り返り
「まだ疲れているだろうから無理はいけない!持ってきた分も俺が食べさせてあげるからな!」
と宣言し、"では行ってくる"と言った後、襖をパタリと閉じ何処かへと行ってしまった。