第14章 秘薬を求めて※
美味しそうな食事を見ていると、口の中にジワリと唾液が溢れてくる。
天ぷら
お漬物
きのこの炊き込みご飯
お味噌汁
どれもこれも美味しそうで、早く食べたいと私の身体は叫んでいた。
「…っでもこれ、杏寿郎さんが食べようとしていたものですよね?私が食べても…いいんですか?」
それでも、大食いな杏寿郎さんから食べ物を奪ってしまうのは何だかとても悪いような気がして、箸を取ることがはばかれてしまう。
「いくら食べることが好きな俺とて、腹を空かした鈴音を差し置いて食べようなどとは思わない。それに、君の目が覚めたらいつでも食事を出せるようにと準備してもらっている!俺は君の目が覚めたことを伝えに行ってくる。その間好きなものをつまんで待っているといい」
「…だったら、私の食事を持ってきてもらえるまで待っています。だからこれは…っ…!?」
尚も断ろうとする私の目の前に
「ほら。ひとくち食べてみなさい。きのこと醤油の風味が豊かでとても美味いぞ!」
杏寿郎さんが持つ箸によってすくいあげられた炊き込みご飯が現れた。
…っ…いい香り…すっごく美味しそう…!
ジュワリと量を増した唾液が、行き場を失って口の端から垂れてきそうになる。それをゴクリと飲み込み、炊き込みご飯の向こう側にある杏寿郎さんの表情をチラリと確認してみると
……その顔、好きなんだよなぁ
ニッコリと隻眼を細め、普段の猛禽類のようにギョロギョロとした目はなりを潜めていた。そんな優しく温かい表情に
パクリ
私は杏寿郎さんが差し出してくれた炊き込みご飯を口に含み、その味を堪能するようにゆっくり咀嚼し飲み込んだ。
「…っ美味しい!」
杏寿郎さんが教えてくれた通り、間違いのない美味しさで、もっと食べたいと思ってしまう。
「そうだろう!?美味いだろう!」
「はい!こんなに美味しい炊き込みご飯は初めてです!」