第14章 秘薬を求めて※
"約2日間食事をとっていないからな。腹が空くのは当たり前だ"
杏寿郎さんの言葉を頭の中で反芻し
「…っ2日間!?私…そんなに長く眠っていたんですか!?」
自分の中の時間経過の印象と、実際のそれの差異に驚愕してしまう。杏寿郎さんは驚き目を丸くする私の腕を取り、ゆっくり立ちがらせてくれると
「あぁ。あまりにぐっすりと眠り続ける故そのまま起きないのではと心配した」
「……そんなにですか…」
「宇髄から聞いた怪しい花の影響かと思い胡蝶に診てもらったところ、ただ疲れて眠っているだけだと言われとても安心した」
私の腰と肩を支え、食事が乗っている卓の方へと連れて行ってくれた。優しく私を介抱してくれる杏寿郎さんには申し訳ないものの、私の頭の中は
…胡蝶様が…この部屋に来たのね…
その事で頭がいっぱいだった。
あれだけ激しく情を交わした部屋に誰かが足を踏み入れる。藤の家の主であるあのお婆さんならまだしも、胡蝶様は恥ずかしい。いや、恥ずかしすぎる。
ぐちゃぐちゃになったはずの布団は、綺麗になっていたし、杏寿郎さんが換気でもしてれたのか、部屋の空気も、杏寿郎さんが食べている食事の匂いはするが、事後の独特な空気はない。
それでも胡蝶様が、天元さん、もしくは杏寿郎さんから私の身に何があったのかを聞いていれば、私と杏寿郎さんがこの部屋でナニをしていたかなんてわかりきっていたに違いない。
…次に胡蝶様に会う時…どんな顔したらいいんだろう
そんなことを考えていた私だが
「……いい匂い」
「そうだろう!?その天ぷらがとても絶品だった!」
目の前に現れた(移動してきたのは私だが)美味しそうな食事達に、一気に思考を奪われてしまった。
杏寿郎さんは私をゆっくりと座らせてくれると
「ほら!食べるといい!」
自分が食べるはずだったはずの食事を私に勧めてくれた。