第14章 秘薬を求めて※
熱く荒い呼吸を繰り返す私の様子に
「媚薬作用を消す薬をよこせ」
天元さんがそう要求するも
「そんなものはない。誘幻花の素晴らしいところは惑わされていることにも気が付かず、副作用もなく、徐々に頭と身体を支配出来ることだと先ほど説明した通り。自然と作用がなくなるのを待つことだな」
天亥様から返ってきたのはそんな答えだった。
「……っ…そんな…」
「……ッチ」
私の言葉と、天元さんの舌打ちが重なった直後
「…声出すんじゃねぇぞ」
天元さんは普段よりも低い声でそう言うや否や私の身体を俵抱きにし
「……っ…んぁ!!!」
「っ馬鹿!声出すなって言っただろ!」
「…すいませ…っ…でも…」
下腹部をギュッと圧迫され、堪えようのない甘い痺れが私の頭から下腹部にかけて走った気がした。
「…っ二度とこいつに手ぇ出すんじゃねぇぞ!」
天元さんが吐き捨てるようにそう言った言葉に
「そんな無駄なことはしない。代わりを探すまでだ」
天亥様はそう言うと
「さっさと俺の里から出ていけ」
最後に僅かに怒りを孕んだ表情を見せ、その場からいなくなった。
私を担ぎながら里を出た天元さんは、猛スピードで森を駆け抜け、里から1番近い藤の家に向かっていた。その間も
「…っ……ん……」
天元さんの肩にただ担がれているだけのはずなのに、誘幻花の効力に侵された私の下腹部は、僅かな振動ですら快感に変換し、度々声が漏れ出てしまっていた。
「…ん…っ…ふ…」
「………」
私は快感に飲まれてしまう一歩手前でなんとか踏みとどまり、目をギュッと瞑りながら天元さんの息遣いや移動の際に立つ音に集中し、そこから意識を遠ざけようとしていた。
けれども、誘幻花の効果をそんなことで誤魔化すことが出来るはずもなく
「…っ…てんげ…さ…っ…ま…止まって…!」
じわじわとせり上がってくる快感の波に、私はドンドンと天元さんの背中を両手の拳で叩いた。そんな私の行動に天元さんはピタリと立ち止まる。
「どうした?」
「…っ……降ろして…ください…じゃないと…っ…」
下腹部を揺らすその振動だけで果ててしまいそうなどとは口に出せるはずもなく、私はそれ以上言葉を紡ぐことは出来なかった。