第14章 秘薬を求めて※
「…私が怖がってる?…馬鹿な事…っ…言わないでください」
そんなのは噓だ。想像すらしたくないが、私はあの無機質な表情の男が優秀な遺伝子を残すための駒にされようとしている。
今すぐ逃げ出したいのに、私の身体は薬の効果と恐怖で既に思うように動かなくなっていた。それだけじゃない。
…私のへまで秘薬の調合法が手に入らなくなるなんて…そんなのは絶対に駄目
秘薬は私たち鬼殺隊の希望であり、長年続いた闘いを終わらせるための鍵だ。だから絶対に、何があっても手にいれなければならない。それでも
……杏寿郎さん以外に触られるなんて…絶対に嫌だ
どうしても、そう思わずにはいられなかった。
”任務を遂行するために自分の身体のひとつやふたつ”、そう思える心の強さがあればどんなによかっただろう。
じりじりと私との距離を詰めてくる天亥様の奥方2人は
「大丈夫。天亥様はとてもお優しい方だから、女性の扱いもとっても上手なの」
「そうよ。こんな素敵な人に選ばれるなんて、貴方は幸運ね」
誘幻花を手に持ちながらニコニコと笑っている。
「…私がその要求に応じなければ、秘薬の調合法はいただけないんですか?」
恐怖心を抑えながらそう尋ねた私だったが
「それとこれとは別だ。俺は里の長として、取り交わした約束を破るような愚かな真似はしない。お前が応じようがなかろうが、彼奴に調合法は渡す」
「……」
読めない天亥様の答えに思わず黙り込んでしまう。
…秘薬の調合法は…もらえるの?だったら…この部屋から抜け出して、天元さんが戻るまで身を隠せば…なんとかなるんじゃ!
私にとって絶望的なこの状況を打開する一筋の光が見えた気がした。
……自分の為に…杏寿郎さんの為に…自分の身を守ってみせる…!
3人の意表を突くため、誘幻花は吸い込んでしまうが背に腹は代えられないと再び空振波浄を使おうとたその時
チクッ
「…っ!!!」
うなじ辺りに何かが刺さった感覚を覚える。