第14章 秘薬を求めて※
……この男…きっと本気だ
背筋がゾワリとし、身体が冷たくなった。それでも
「…そんなことをしたら、天元さんが貴方の側近に何をするかわかりませんよ?」
少しでも時間を稼ぎ、天元さんが鬼の頸を狩り戻ってくるのを待つしか現状私に出来ることはない。下手なことをすれば秘薬の調合法を教えてもらえなくなってしまう可能性もある。それだけは絶対に避けたかった。
「あいつはただの駒の一つにすぎない。なくなったら補充する、それだけだ」
血も涙もないその言葉に
「…っ…最低…!」
そう呟かずにはいられなかった。
……駄目…とにかく冷静に、今の自分に何ができるかを考えないと…
天元さんからもらったスパイスの効果が徐々に薄れて来てしまっているのか、既に身体が熱さを取り戻しつつあつた。
回復の呼吸でなんとかならないかと思ったが、呼吸をすることはすなわちあの花の花粉と香りを吸い込むことに繋がる。どちらの効果が上回るのか定かではないが、現状それを試すのは得策とは思えない。しかも
…どうしよう…身体が…どんどん熱くなってくる……それにこれって…
その熱さに覚えがあり、それが余計に私の思考能力を奪っていた。
…やだ…そんなの…絶対に…嫌だ!
火照りから流れる汗と焦りと恐怖で流れる冷や汗。今流れているそれが、どちらに該当しているのか自分でもわからず、ただただ自分の奥底から湧き上がってくるその感覚を懸命に耐えるしかない。
「怖がらなくても大丈夫。貴方はただ天亥様に身を任せていればいいだけ。怖いなんて感情、全く感じなくなるわ」
門の女性と
「そうよ。私もあなたと同じ、外部出身だったの。連れてこられた当初は辛かったけど、今は天亥様の為に尽くし生きることが生きがいなの」
妊婦の女性も、気味が悪い笑みを貼り付けながら私に近づいてくる。