第14章 秘薬を求めて※
「速攻戻って来てやるから準備しておけよ」
天元さんはそう言うと、”それではご案内いたします”と言ったお付きの人の後に続き出て行ってしまった。 遠のいていく天元さんの気配を感じながら
……騙しているとか…そんな様子はない…里の存亡に関わってるんだもん…私に下手なことはしてこないはず
そんなことを考えていた。
まもなく天元さんの気配が感知できない程の距離まで遠のいてしまい、今度は自分の身を守るため、自分の周囲の気配を探ることに集中した。
高座に座っている天亥様は私のことを相変わらずの無機質な表情で見下ろしている。 部屋に残った天亥様、私達をここまで連れて来てくれた女性、お腹の大きな女性、そして私の誰も言葉を発さず、異様な沈黙が部屋を包み込んだ。
その沈黙を破ったのは
「お前はあいつのなんだ?」
意外にも天亥様で、全く興味なさげな声色で私にそう尋ねてきた。
「…私は天元様の弟子です。鬼殺隊において”継子”と呼ばれる立場にあります」
「なるほどな」
天亥様は私の返事に対しそう一言つぶやくと
「こいつを客間に案内しろ」
そう言いながら立ち上がった。
「「承知いたしました、天亥様」」
「”丁重に”もてなしてやれ」
「「はい」」
女性2人の声が驚くほど綺麗に重なり、私にはそれが不気味に思えて仕方なかった。
言葉の通り私はとても丁重に扱われていた。
私をここまで連れて来てくれた女性二人は天亥様の奥方様だったようで、何らかの狙いでもあるのか、何かするでもなく私を含めた3人で卓を囲んでいるという何とも言えない状況だ。
気配を探ってみても、他の誰かが近くにいる様子はない。天亥様の気配も、自室にでもいるのか、今のところ目立った動きは見られない。
…何か…狙いがあるのかな…?
そんなことを考えながら卓の真ん中に置かれた黄色く可愛らしい花を見ていると
「甘いものはお嫌いですか?」
綺麗に細工された和菓子の乗る小皿を、門の女性(変な情を抱かないため敢えて名前は聞いていないし向こうも名乗らなかったので心の中でそう呼ばせてもらう)が私の方へスッと寄せてきた。