第14章 秘薬を求めて※
……他人を道具としか思わない…雛鶴さんまきをさん須磨さん達が言っていた通りだ
私は、4人がこの里を去る決断をしてくれてよかったと心から思ってしまった。私がそんなことを思っている間も兄弟の会話…いや、交渉は続いてく。
「だろう?お前のことだ、鬼のねぐらは見当がついてるんだろ?」
「当然だ」
「だったら話は早え。俺がその鬼の頸を狩る。それと引き換えに秘薬の調合法を俺たち鬼殺隊に教えてくれ」
天元さんのその言葉に
「………」
天亥様は何を考えているのか全く分からない、ただただ無機質な視線を向けている。
暫しの沈黙が続いたあと
「抜け忍のお前の力をかりたくないが致し方ない」
そう言ってお腹の大きな女性の方へチラリと目くばせをした。するとお腹の大きな女性はスッと天亥様へと近づき、懐から手のひらよりも少し大きな巻物を取り出した。
天亥様はそれを受け取り、手早く広げると
「ここに秘薬の調合法が記されている。これとお前が狩った鬼の頸の物々交換だ」
と言った。けどももちろんその要求をそのまま飲み込むことは不可能で
「鬼は頸を切り落とせば頭も身体も全て燃え尽きちまう。だからそれは無理だ」
天元さんはそう言った。
「なるほど」
「お前、里の長なんだから付き人の一人や二人いるだろ?そいつを一人、俺たちと一緒に来させろ」
天元さんのその提案を
「駄目だ」
天亥様はバッサリと切り捨てた。そして視線をわずかに鋭くし
「お前なんぞに、俺の貴重な駒を貸せるわけがないだろう?」
威圧的にそう言った。天元さんは小さく舌打ちをすると
「じゃあどうしろって言うんだよ。俺が”鬼は無事狩り終えた”とでも言えばお前は納得すんのか!?もしくはお前直々に俺たちと来てくれんのか!?」
声を僅かに荒立てながらそう言った。
「…落ち着いてください天元さん」
私が小声で天元さんに声を掛けたその時
「その女を置いていくのであれば、俺の部下を連れて行くことを許可しよう」
天亥様が、天元さんの斜め後ろに座っていた私をスッと指さしながらそう言った。