第14章 秘薬を求めて※
「万が一の時、一番近くにいる柱を呼びに行くように虹丸には命じてある。煉獄の鴉は…まぁ煉獄しか呼びに行かねぇだろうな」
「…でしょうね。でも、虹丸とはどう連絡を取り合うんですか?」
「ネズミ達だ」
「……成程」
天元さんは、上空に向けていた視線を下げ
「行くぞ」
最終確認をするようにゆっくりと私にそう言った。
「はい」
私は
すぅぅぅぅっ
と静かに呼吸を深め、天元さんと私の周囲の気配を探ることに集中する。
天元さんはそんな私の様子をちらりと確認すると、門の方へと歩き始めた。私もその後に続き歩いていると
…あ……開く…
門まであと2メートル程距離があるというのに、扉の向こう側にいる人間が門を開けようとしている気配を感じ取れた。
ギィィィィィィ
嫌な音を立てながら重厚な門が開き、そのちょうど真ん中辺りに位置する場所に女性が一人ポツンと立っていた。女性は私たちの姿を確認すると
「鬼殺隊の遣いの方でいらっしゃいますね。我らが忍の里にようこそいらっしゃいました」
平坦な声と表情を浮かべながらそう言った。念のために女性の様子を慎重に観察してみるが、手足の動き、呼吸の音、そして気配になんらおかしい部分はない。しいてあげるとなれば、やはりこの女性も、”忍”であることを確かに感じられる気配の持ち主だという事くらいだ。
「出迎えご苦労さん。早速だが里の長のところへ案内しろ」
天元さんの物言いに
…もう少し…遜ったり丁寧に言えないのかな?
なんてことを思ってしまう。
けれども当の女性は天元さんのそんな様子は少しも気にならないようで
「承知いたしました。では私の後に着いて来てください」
私たちに軽く頭を下げながらそう言うと、スッと足音もなく歩き始めた。
天元さんが私にチラリと視線をよこし、私はそれに応えるように軽く頷く。それからゆっくりと歩き始めると、里の中で一番大きな建物…長の家、つまりは天元さんの実家へと向かった。