第14章 秘薬を求めて※
「この俺様を誰だと思ってやがる」
そう言い終わるや否や
…ビシッ
「…っ…痛ぁい!!!」
おでこを指で弾かれ、そのあまりの痛さに
…私のおでこ…穴空いてない…?
弾かれた部分を両手で抑えながら天元さんをじっと睨みつけた。
「俺様はなぁ、あのかわいい3人の嫁たちの旦那だぜ?あいつらとの約束果たすためなら這ってでも必ず帰る。余計な心配すんじゃねぇよこの地味阿保が」
その言葉になんの根拠はありはしない。それでも
「……わかりました」
雛鶴さんまきをさん須磨さんの為なら、天元さんは本当にそうすると思えて仕方ない。
「よし。じゃあ最後にこれを口の中に入れろ」
そういいながら天元さんが私の眼前にズイと出したのは
「…造血剤?」
私が知っているそれによく似た見た目の丸薬だった。
「違えよ。これはただの強烈な…異国の言葉しか出てこねぇな…スパイスみてぇなもんだ」
「…スパイス…ですか?」
「あぁ。この里には幻術…音や香りで人を惑わすことに長けた人間もいる。少しでもおかしいと思ったらそれを噛め。ぶっ飛ぶくらい辛ぇから、うまくいきゃあ脳が刺激されて幻術から逃れられる」
「……ぶっ飛ぶくらい辛い…」
なにやらものすごく不安ではあるが、昨日のお館様の声の件もあり、幻術を仕掛けられてしまったらかからない自信はない。
響の呼吸の型で飛ばすことは可能かもしれないが、幻術という未知のものに果たして効果があるのか定かでない。
「口に入れとくだけなら無味だし溶けねぇ。舌の下っ側にでも隠しておけ」
「…わかりました」
天元さんの手からスパイスを受け取ると、潔く口に含みもごもごと舌の下にしまい込んだ。
天元さんは私が指示通り動いたことを確認すると、スッと視線を上空へと向けた。つられるように上空を見ると、そこには2羽の鴉…要と虹丸が適度な距離を保ちながら旋回していた。