第14章 秘薬を求めて※
「……あそこが入り口だ」
周囲に張り巡らされた数々の罠を搔い潜り、たどり着いたのは天元さんの故郷である忍の里。天元さんと私は、木の陰に身を潜め、里の入り口である木製ではあるが重厚な扉の様子をじっとうかがっていた。
「…怖いくらいに…静かです」
呼吸を使い、里の中の様子を探った私は衝撃を受けていた。
人が生活している様子は確かにある。けれども、赤子以外から発せられるその気配は常人のそれに比べると驚くほどに感じ取りにくく、生活音すら私が知っている普通のそれとは異なったのだ。
……流石、忍だけが暮らしている里
関心に近い感情を抱いている私に反し、天元さんは里での日々を思い出しているのか険しい顔をしていた。
扉に向かっていた天元さんの視線がふっと私の方に向けられ
「罠が発動したことで俺たちが来ていることは把握済みだろう。こっからはコソコソせず、鬼殺隊の代表として堂々と里に入る。門の先にいるのはおそらく俺たちを迎えに来た遣いの人間だ。わかっていると思うが今回俺たちは里の人間と喧嘩しに来たわけじゃねぇ。長である俺の弟と交渉するために来た。お前は向こうさんが隠密に何か仕掛けてこないか、とにかく常に気配を探り続けろ」
そう指示をうける。
「はい」
「場合によっては俺とお前、別々にさせられることもある。その時は、何があってもお前自身を優先しろ。状況的に可能であれば即撤退。わかったな?」
「……」
その言葉に、私は”はい”と返事をするのを戸惑ってしまう。
…天元さんを置いて私だけ逃げる……そんなの…絶対に無理
必ず生きて杏寿郎さんの元へ帰ると、槇寿郎様とお約束した。その約束を破るつもりは毛頭ない。それでも、大好きな3人の愛する人を置いて逃げるような選択を、本当にその状況に陥ってしまった際に選べる自信もなかった。
迷い黙り込む私に
「お前は馬鹿か」
天元さんは酷く呆れた表情をしながらそう言った。