第3章 未知との出会い、騒音との再会
更に2つの訓練をこなすことに慣れ始めた頃、
「今日から体裁きの訓練を始める。場所を移動するから付いてこい」
「はい」
そう言って連れていかれたのは、音柱邸のすぐ裏にある山の中。
少し歩いていくと、木々に囲まれていた場所に突如として現れた、上下左右柵に囲まれ、まるで動物をとらえておく為に設置された木製の檻のような物が目に飛び込んできた。
「…あれ…なんですか?」
「すげぇだろう?あれを俺様の手造りだ!」
いや。そんなことは聞いてないんだけど。
そう思いながらも
「へぇ…凄いですね」
得意の愛想笑いを貼り付けそう答えた。
「いや全然心こもってねえし。んっとにお前は、嫁たちにはゴロゴロ猫みたいになついてる癖に俺に、対しては相変わらずかよ」
そう言って天元さんはさっさと歩いて、木柵の方へと先に行ってしまった。私はその背中を見つめながら
そんなこと、ありません。
と心の中で呟く。
派手派手うるさいし。今まで出会ってきたどの男性よりも体格は良いし。まさかの奥さんが3人もいるし。
最初は、本当にただただその存在が怖かった。奥さんが3人もいて、一体どんな泥沼な毎日を送っているんだろう、と思っていた。けれども、現実は全然そんな事はなかった。
天元さんと雛鶴さん、まきをさん、そして須磨さんの4人は
"4人でひとつ"
といえる関係で、3人の中で誰が1番で誰が次だとか、普通なら揉め事がおこりそうなのに、そんな事は驚くほどになかったのだ。
まだこの音柱邸に来て1ヶ月も経っていないと言うのに、私はすっかり雛鶴さん、まきをさん、須磨さん、…そして、天元さんの事を、好きになってしまっていた。
「なにぼーっとしてやがる。さっさと来い!」
天元さんのその声で、我に帰った私は、
「…っ…はい!すみません」
駆け足でその謎の木柵へと向かった。