第13章 幸せすぎる無理難題と悲しすぎる別れの口火
そんな私に
「鈴音こそ何を言っているんだ?先程君はお館様に"祝言を早くあげてほしい“と言われ、"そうなれるよう精進する"と言っただろう?」
杏寿郎さんは真顔でそう言ってきた。
残念だが、私もそのことは覚えている。
「…っ…言いましたけど…あの時は…「それだけじゃない!」…っ!」
杏寿郎さんは私の言葉を遮るとグッとその端正な顔を私に寄せ、じっと私の瞳の奥の奥まで覗き込むような視線を寄越してくる。
「俺が君の言葉を”決して忘れない”と言った際、君は”忘れないで”…と、そう言ったんだ!あの時のやり取りは一語一句覚えている!」
「…っあの時は…お館様の不思議な声の影響で…思考が定まらなくて「定まらない中出て来てしまった!すなわち君の本音ということだろう!?」……っ…それは…」
ジッと熱いほどに見つめられ、隠していたいと思っていた未来への淡い願望をほじくりだされてしまった私は、瞳を左右に揺らし大いに戸惑った。そんな私に
「諦めろ」
きっぱりとそう言ったのは
「天元さん」「宇髄!」
筋骨隆々な腕を組みながら木に背を預け、楽しさ半分呆れ半分と言った表情を浮かべている天元さんだった。天元さんは木にあずけていた背をすっと起こし、玉砂利を踏みしめているというのに何の音も立てることなく私と杏寿郎さんの元へと近づいてくる。
それから私と杏寿郎さんの真横で立ち止まると
「お前さ、いい加減に気づけよ」
今度は呆れ100パーセントの表情を私へと向けそう言った。
私は天元さんの言葉の意図が掴み切れず、さりげなく杏寿郎さんと距離を取るように後ずさり(すかさずそれを詰めてくるのはどうかと思う)
「…気づけって…何にですか?」
つんと唇を尖らせながらそう尋ねる。
天元さんはトンと杏寿郎さんの肩に手を置くと
「こいつはなぁ、お前に目を付けて即お館様に、”宇髄の継子である荒山鈴音を娶りたい”って文を書いて寄越してんだよ。な?煉獄」
と、杏寿郎さんに確認するように問いかけた。