第13章 幸せすぎる無理難題と悲しすぎる別れの口火
お館様はゆっくりと話をしてくれてはいるのだが
「……」
待って待って…話の方向が見えない…あれ…私の耳が…やっぱり変な影響を受けてるせいで…幻聴が聴こえてるのかな…?
理解し難いその内容に、私は酷く混乱していた。
どうしていいか分からず助けを求めるように杏寿郎さんの顔を見てみるも
……だめだ
杏寿郎さんはニコニコと機嫌良さげに笑っているのみだ。私は杏寿郎さんから視線を横にずらし、今度は天元さんの顔へと視線をやった。
……こっちもだめだ
天元さんは最近よく見る私を揶揄い楽しむようなあの顔をしており、私に助けの手を伸ばしてくれる気配など微塵もなかった。
結局そのままお館様に視線を戻すしかなく、依然として私に向けられていたそれと再び視線が合う。
「杏寿郎と鈴音、2人の祝言を見られる日が来るのを楽しみにしているからね。私はこんな身体だから、なるべく早めにお願いできると嬉しいな」
「……っ…!」
耳の奥を通り抜け、脳を直接揺らしてくるようなその声に
フワッ
と、思考が掠め取られるような感覚に陥る。
そして自分でも無意識のうちに
「…必ず…そうなれるよう…精進します」
そう答えてしまっていた。私のその言葉に反応したのはお館様ではなく
「そうか!その言葉!決して忘れはしない!」
口角をいつも以上に上げている杏寿郎さんだった。いつもの私であればそんなことを口走らなかったはずだが、お館様の心地良すぎる声に思考能力が低下してしまっていた私は
「…はい…忘れないで…」
杏寿郎さんに向け、そんな事を言ってしまったのだった。
「まじでお前、何しに来たんだよ」
じっとりと、呆れたと言わんばかりの視線を寄越してくる天元さんに
「……すみません」
相変わらず白くて綺麗な玉砂利を見ながらそう言うことしか出来なかった。