第13章 幸せすぎる無理難題と悲しすぎる別れの口火
「はい」
「送った文に返事は来ていない。でも鴉の話では目は通していたようでね。急かしてしまって悪いんだけど、なるべく早めに向かって欲しい」
「もちろんです!準備が完了次第、すぐにでも行って参ります」
「ありがとう。天元」
お館様はそうお礼を述べた後、私の方に視線を移し
「鈴音」
私の名をゆっくりと呼んだ。私は今にも力の入らなくなりそうな身体に気合を入れ
「はい!」
お館様の目をまっすぐと見据え返事をする。
「天元は何でも1人でしようとするからね。ただの鬼を狩るだけの任務であればそれでも問題ないかもしれないけど、今回はそうじゃない。だから継子である鈴音が、しっかりと天元の助けになってあげるんだ」
「…っはい!必ず…天元さんの力になれるよう努めます…!」
舌がうまく回らないのを何とか堪え私はそう答えた。
「ありがとう。鈴音が一緒だと思うと私も安心だ」
お館様はそう言った後、ゆっくりと"でも…"と言葉を続けた。
…何を言われるんだろう?
そう思い、私は思わず首を傾げてしまう。
お館様は私ではなく、天元さんの隣に座っている杏寿郎さんの方へと視線を向けると
「私としても、鈴音になるべく早めに杏寿郎の伴侶になってもらいたいと思っているからね」
そう言って、酷く慈悲深い笑みを浮かべた。
「…へ?」
私はお館様の口から出てきた予想外すぎる言葉に、何とも間抜けな声を出してしまう。
「隊士の人数はひとりでも多い方が、私たちの悲願を果たすためにはいいかもしれない。それに鈴音は、天元唯一の継子で、優秀な能力の持ち主。前線を退いてしまうのは私としてもとても惜しい。でも、その代わりになり得る人材は行く行くは出てくる可能性がある。だけど、杏寿郎の伴侶になり得るのは、杏寿郎が伴侶として望んでいるのは、鈴音しかいないと…そう思ってるんだ」