第13章 幸せすぎる無理難題と悲しすぎる別れの口火
「宇髄。声が大きいぞ。少しは抑えたらどうなんだ?」
「…はっ!お前だけにゃ言われたくねぇな!」
そんな杏寿郎さんと天元さんのやり取りに、深くうなずいてしまったのは当然の結果だろう。
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「杏寿郎、天元、それから鈴音。今日はよく来てくれたね」
天元さんが丁度笑い終えたころ、丁度良く奥方様が私たちのいる中庭までお迎えに来てくれた。
初めてお目にかかる奥方様に”なんて神々しくて綺麗な方なの…!”と思わず目を奪われたのはつい先ほどの出来事なのだが、現在私はその時感じた以上の衝撃を受けていた。
…お館様の声…なんだろう…こんな声…聴いたことない……
私は、お館様のお布団のすぐ隣に座した杏寿郎さんと天元さんの位置から1メートルほど後方に座らせてもらい、そのやり取りを一緒に聞かせてもらっているのだが、天ぷらを揚げる音や雛鶴さんが野菜を切る音、それから杏寿郎さんの声を聴いた時とは異なる不思議な感覚に、私は酷く戸惑いを覚えていた。
…なんだろう…頭がふわふわと…目眩がしてきそうな…
私はグッと奥歯を噛みしめ、散ってしまいそうになる思考を懸命に集める。
「こんな格好でごめんね。最近で立っていることも出来なくなってしまったんだ」
お館様は布団に入れた身体を上半身だけ起こしていた。それでも背筋は上から釣られているかのようにピンと伸びており、具合が悪いことなど感じさせないようなお姿だった。
「いいえ!これは俺が言いだしたことであり、俺個人の問題の部分が大きい案件です!お館様の手を煩わせてしまい申し訳ないとすら思っています!」
「それは違うよ。天元の生まれ育った里の”秘薬”が手に入れば、私たち鬼殺隊にとってはとても大きな助けになる。天元個人の問題なんてことは少しもないんだよ」
「…勿体ないお言葉です」
そしてあの天元さんですら謙った態度を見せるお館様と言う存在に、こうして直接お会いすることが初めてにも関わらず、私はどうしようもなく魅了され、集中しなければと思うのに何故かそうすることが出来ない。