第13章 幸せすぎる無理難題と悲しすぎる別れの口火
その反応に
…あ…私…なんだか墓穴を掘った気がする…
そう思った時には既に後の祭り。
杏寿郎さんは右手に続き左手も私の頬に添えると
「…前々から感じていたのだが、君は俺よりも宇髄の奥方達の方をより好いているようだな」
明らかに不満げな声色でそう言った。
「っち…違います…ん?…違くないけど違うんです!」
私は慌てて杏寿郎さんの手に自分の手を添えると
「私、3人のことは大好きです!でも杏寿郎さんよりも…とか、そんな比べられるものじゃなくて…3人は家族みたいなもので…善逸やじぃちゃんたちと同じで…大好きなんですけど…杏寿郎さんは違うんです!杏寿郎さんだけは…特別なんです!」
杏寿郎さんの誤解を何とか解こうと自分の正直な気持ちを吐露した。すると
「本当か?」
杏寿郎さんは僅かに声を明らめながらそう尋ねてきた。
「…ッもちろんです!」
「………」
黙り込む杏寿郎さんに、視覚を奪われその表情を確認することが出来ない私は、胸をドキドキさせてながら杏寿郎さんの言葉を待つしかない。
フッと顔の前に熱い気配を感じ
「ならば君から口付けてくれ」
互いの呼吸を感じられるほどの距離感で杏寿郎さんがそんなことを言ってきた。
「…っ…む…!」
咄嗟に”無理です”と言いかけたものの、杏寿郎さんの口調も要求も、いささか意地悪気なそれに聞こえるが、私の頬を包むその両手があまりにも優しいものだったので言うのを留まった。
杏寿郎さんは…いつも私に真っすぐと気持ちを伝えてくれる…たまには私も…応えてあげなくちゃ
私は杏寿郎さんの手に重ねていた手をスッと外し、杏寿郎さんの気配を探りながら僅かに前へと伸ばした。そのまま腕を交差するように動かすと自然と杏寿郎さんの気配がより近くなり
ちゅ
互いの唇が軽く重なった。その感触に
…柔らかい
恥ずかしさ以上に胸を包んだのは幸福感だった。