第3章 未知との出会い、騒音との再会
その言葉に
「…っ!」
一瞬どう答えるべきか悩んだ。
隊士になってからも、獪岳と顔を合わせる機会は現時点ではなく、どうしているか全くわからない状況だ。
獪岳なんて、どうなっていようが私には関係ない。
そんな気持ちが心の大半を占めていた。
それでも
無事生きているのかな
と気になる気持ちがあるのも嘘ではない。
「…今は…二人です」
私の口から出たのは、そんな曖昧な答えだった。
歯切れの悪いその答えに何かを感じ取ったような天元さんだったが、
「ま、俺にはどうでもいいけどな」
そう言って、雛鶴さんに近寄り
「おし。クナイはこの辺にして、次に移るぞ。雛鶴。お前は一旦ここで終わりだ。ご苦労さん」
労うようにその頭にポンとその大きな手を置いた。
「はい。ありがとうございます。天元様」
そう言った雛鶴さんの表情からは、心から天元さんのことを慕っていることが伺い見ることが出来た。
その後、雛鶴さんと別れ、代わりにまきをさんが合流すると、原っぱしかない、だだっ広い場所に連れて来られた。
「ほれよ」
ズイっと差し出されたものを、意味がわからないまま受け取る。
「この黒い小さな玉…なんですか?」
手の中を見ると、そこには1寸にも満たない小さな黒い玉があった。人差し指と親指でそれをつまみ、じーっと観察しながらそう尋ねると
「爆玉」
と、天元さんがごく当たり前の事だと言わんばかりに言う。
…はぜだま…?爆玉って…なによ。
私はこれまでの19年において、爆玉なんてものを手にしたのは初めての事だし、それどころか耳にしたことも初めてだ。
「爆玉って…薬かなにかですか?」
「はぁ?んなわけねぇだろ。爆玉っていうのはな、爆弾だよ爆弾。忍の道具」
「あぁ、爆弾のことなんですね」
天元さんが、あまりにも当たり前にそう言うものだから、私も大した事ではない気がした。けれども、
…え?待って待って。爆弾って、あのドーンてなってバーンってなるあの爆弾?
自分の手に持っているこの小さな黒い玉が爆弾だと理解した途端、私の手が小刻みに震え始める。
そんな私に、
「落とすなよ。爆発するぜ」
天元さんはニヤニヤと、意地の悪い笑みを浮かべながら言った。