第3章 未知との出会い、騒音との再会
「…お前さあ。なんでそんなに筋がいいんだよ。実は先祖が忍の家系だったとか?」
そういいながら、2丈程離れた場所に設置されている的を腕を組みながら見ているのはこの音柱邸の主である音柱様、もとい、天元さん。
その的には、私が投げたクナイが10本。その10本のうち8本は、点在する印の中心を的確に射貫いており、後の2本も若干のずれはあるものの、十分的を獲ているという位置に撃ち込まれていた。
「そんなこと絶対にありません。雛鶴さん…と、天元さんのご指導が的確だからです」
「俺をついでみたいな言い方するんじゃねえよ」
「そんなつもりは…ありません」
ムキムキネズミに連れられてここに来たあの日から、”時間がもったいねぇんだよ”と言うお言葉の元、私は有無を言わさずここに住むよう命令…もとい、ご指示を受け、長屋を出て、この音柱邸の離れに住まわせてもらうこととなった。
更には”1か月間はみっちり修行を受けろ”というお言葉の元、任務を免除され(これに関しては非常にありがたかったが)、朝から晩まで。そして時には晩から朝まで、剣士としての訓練ではなく
これ忍の修行じゃない?え?私隊士をやめて忍になるの?
と聞きたくなってしまうようなことばかりをしていた。
その修行の成果が、この自画自賛したくなるようなクナイの命中率だ。
「鈴音は元々、一般的な体の捌き方に関しては私たち以上だったものね。強く踏み込んだ時の音とかは、まだ出てしまうことも多いけど、普通の聴覚の持ち主であれば気づかれることも、今ならもうほとんどないんじゃないかしら」
「最近は育手に何習って来たんだって聞きたくなるような隊士も多いが、お前ん所はそうじゃねぇようだな」
私は天元さんのその言葉がとても嬉しくて、
「当たり前です!なにせ私は元鳴柱に育てられましたから!優秀な弟弟子だっているんですよ。少し前に選別も突破したらしくて、今は私と同じ隊士として頑張っているはずです」
まるでじいちゃんと善逸のことを自慢するかのようにそう言っていた。けれども、
「へぇ。お前とそいつ、二人だけ?」