第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
蝶屋敷で療養していた時は包帯で覆われていたし、その後会った時にはすでに今現在もつけている眼帯をしていた。
私は珍しく迷っているような杏寿郎さんの顔をジッと見つめ、杏寿郎さんの言葉を待つ。そんな私の顔を杏寿郎はんはチラリと見た後
「…あまり見てくれのいいものではない。何よりこの目を見たら……君がまた自分を責めてしまうのではないかと思った」
歯切れ悪くそう言った。
「……え?」
あまりにも予想外の理由に、私は驚き目を丸くする。
「………」
「………」
驚く私と、"言ってしまった"と言う顔をしている杏寿郎さんは互いに言葉を発せず、部屋を沈黙が包んだ。
けれども杏寿郎さんが発した言葉を頭の中で反芻し、杏寿郎さんが眼帯を私の前で頑なに外そうとしなかった理由が、わたしを気遣ってのことだと理解した私は
…この人は…どうしてこんなに私のことを思ってくれるんだろう
杏寿郎さんへの愛おしさで胸が溢れていた。
「気を遣ってくれてありがとうございます。…でも、心配いりません」
私はそう言いながら杏寿郎さんの眼帯に手を掛ける。そんな私の行動を、杏寿郎さんは特に咎める様子もなくじっと見守っているようだった。
「今でも、杏寿郎さんの左目が無事だったらよかったのに…と思うことがあります。だって私、杏寿郎さんの夕日のように綺麗な瞳がとっても好きだから」
杏寿郎はさんは私のその言葉に、露わになっている右目を大きく見開いた。
「でも…この潰されてしまった左目も、私には大好きな杏寿郎さんの一部で、杏寿郎さんが自分の身を呈してたくさんの人を救ってくれた証です。…だから、ね?ちゃんと私に見せて」
私がそう問いかけると
「……わかった」
杏寿郎さんは静かにそう言った。その答えを聞いた私は杏寿郎さんの眼帯を僅かに浮かせた。そして
「外しますよ?」
「うむ」
なるべく優しく引っ張り、杏寿郎さんの顔から取り払った。