第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
お父様も、すぐ引き下がってくれればいいのに
”ほぉ。その言い方だと、お前は鈴音さんを泣かせるようなことをすると…そう言っているように聞こえるが”
何故か話は変な方向へと進んでいき
”俺の為に涙する鈴音は一等可愛いんです!たまにはそんなところも見たい!”
しまいには
”ちょっと杏寿郎さん!どさくさに紛れて変なこと言わないで下さい!”
私自身もその輪に入り込んでしまった。
”変ではない!俺は君のことが愛おしく堪らないだけだ!それの何が悪い!”
”…杏寿郎。お前はいつもそんな感じなのか?大概にしないと鈴音さんに嫌われてしまうぞ”
”っ父上!!!言って良いことと悪いことがあります!”
”もう!二人とも落ち着いて下さい!
”落ちるいている!””落ち着いている”
”どこがです!?”
そんな私たちのどうしようもないやり取りを、遠巻きからそれは楽し気に見守る千寿郎さんの表情が酷く印象的だった。
槇寿郎さん(お父様という柄ではないからその呼び方はやめて欲しいと言われてしまった)と千寿郎くんは、夕餉を終えると足早に帰られた。
”今度はこちらに遊びに来てください”
と言われ、これからもこんな風に会ってもらえるんだと考えると、酷く安心した。
「鈴音。あとは俺がやっておく。君も湯を浴びてくるといい」
「え?いいんですか?」
片手にお皿、片手に布巾を持ったまま、私は杏寿郎さんの方にクルリと身体の向きを変える。
「うむ!このくらい出来なくては、これから共に暮らしてく君に負担ばかりかけてしまうことになる!この程度は任せて欲しい。君が任務に復帰するようになれば、自ずと俺一人でやらねばならないしな」
杏寿郎さんはそう言いながら私の前まで来ると、私の手からヒョイとお皿と布巾を取った。
「…それもそうですね」