第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
「ならば今度は、鈴音さんが杏寿郎の為にその言葉を守ってください。愛する人を失う辛さは…俺一人が知っていれば十分です」
お父様がどんな気持ちでその言葉を口にしたのか。きっと私の想像では追いつかない程の辛さや葛藤、そして杏寿郎さんを想う気持ちが込められているのだろう。
「……わかりました。必ず…何があっても…生きて杏寿郎さんの元に戻ってくると誓います」
私はお父様の目を、私が口にしたお父様への誓いを必ず守るという確固たる意志を込めじっと見据えた。そんな私に
「…ありがとう」
お父様はゆっくりと噛みしめるようにお礼の言葉をくれたのだった。
その後すぐ
”話は済みましたでしょうか!?”
杏寿郎さんが千寿郎くんと共に戻って来た。時計を見ると、杏寿郎さんがこの部屋を出て行ってから10分も経っておらず
”…本当に堪え性のない奴だ”
お父様は、額に手をあて呆れ果てていた。けれども杏寿郎さんは
”俺の中ではすでに10分経過しております!”
というわけのわからない理屈(言い訳と言った方が正しい気もする)を並べ、散歩に行く前と同じく私の隣に陣取り、今度こそ和やかにお茶と団子を食べながら4人で談笑…が始まると思っていた。
のだけれど。
”む?鈴音。何やら目元が赤く見えるが…よもや………っ父上ぇ!!!”
目ざとくも、私の僅かな変化に気が付いた杏寿郎さんが、お父様に食って掛かって行き
”俺の大切な人に一体何を言ったんです!?”
”何を勝手に誤解している。俺はただ、鈴音さんと大切な話をしていただけだ”
”大切な話をするのになぜ鈴音が涙する必要があのでしょう!?俺は如何なる理由があろうと、俺以外の男が鈴音を泣かせることは許せません!”
”…っちょ…杏寿郎さん落ち着いて!”
何故か杏寿郎さんとお父様の言い争い(一方的に杏寿郎さんが怒っているだけに見えなくもないが)始まってしまった。