第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
…っ…もう…いい加減にして!…かくなる上は…
力で敵わないのであれば、別の方法を取るしかない。そう結論付けた私は静かに呼吸を深め
「響の呼吸肆ノ型…空振波浄」
「む!?」
音の壁を杏寿郎さんにぶつけ、その腕の中から抜け出した。
音を立てず廊下に降り立った私の様子を見た杏寿郎さんは目をキラキラと輝かせ
「父上!千寿郎!今のが彼女独自の呼吸…響の呼吸です!どうです!?面白い型でしょう!?」
誇らしげに、そして興奮気味にお父様と弟さんに向け言った。すると
「…確かに。今まで見て来たことのある呼吸法とは異なる種の呼吸だ」
光栄なことに、杏寿郎さんのお父様も、顎に手を当て感心した様子でそう言った。
そして
「響の呼吸とやらには他にどんな型が?」
お父様は、私に向けそんな質問を投げかけて来た。まさかそんな質問をされるとは思っておらず
「…あ…えっと…」
どう説明しようかパッと思い浮かばず、口ごもってしまう。
早く答えないと…!
そう思うも、想定外すぎるこの状況下、ましてや恋仲になって間もない相手のお父様が投げかけて来た質問故に、上手く言葉が出て来てくれなかった。
そんな私に助け舟を出してくれたのは
「…せっかくですし、お茶でも飲みながらゆっくり話しませんか?」
杏寿郎さんではなく
「そうだな!千寿郎が鈴音の為にと買って来てくれた団子もあることだし、茶でも飲みながら話をしよう!」
「はい」
杏寿郎さんの弟さんである千寿郎さんだった。
…助かった…
千寿郎さんのお陰で一旦考える時間が出来た私は、胸に手を当てほっと肩を撫で下ろした。
「鈴音」
杏寿郎さんが私の名を呼びながらゆっくりとこちらに近づいてくる。そして私の前で立ち止まり
「皆で話を出来ればと思っているのだが、体調の方は大丈夫だろうか?」
私の頬を右手の関節で撫でるようにしながら尋ねて来た。