第2章 脱兎の如く
「それじゃあ早速お屋敷の案内から始めましょう!」
こうして須磨さんに腕を引かれ、
「ちょっと須磨ぁ!待ちなさいよ!」
「ふふっ。可愛い子が来てくれたからって、あんまりはしゃがないの」
今後私が長い時間を過ごすことになる音柱邸に足を踏み入れた。
「…おい。お前ら、俺を置いていくんじゃねえよ」
獲物に見つかってしまった
ウサギのように
全速力で逃げ出して
穴の中に身を隠してしまいたい。
そう思っていた。
だけど、
とても優しくて、
少し怒りっぽくて、
物凄く人懐っこい、
目のやり場に…ちょっと困る
魅力的なお姉さま達がいる
この場所を。
無駄に顔が良くて、
うるさくて、
ちょっと意地悪で、
派手な元忍がいる場所を。
じいちゃん
そして善逸と過ごしたあの家と
同じくらい大切な場所だと
そう思う日が来が来るなんて
私は少しも想像していなかった。
✳︎第二章-完-✳︎