第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
私は肩に乗っている和を腕に抱き、黒くてまん丸な目をじっと覗き込んだ。
「大丈夫。必ず行くよ。必ず、和と杏寿郎さんの待ってる場所に帰るから。心配しないで」
それから和の不安が何処かへ飛んでいくようにと笑いかけた。すると和は
「……わかった!鈴音は和と同じくらい杏寿郎のこと好きだもんね!2人は仲良しだもんね!よかったの〜」
羽をバサバサと羽ばたかせながら全身で喜びを表現し、その勢いのまま空に羽ばたいて行った。
「早くきてね〜」
小さくなる和を見送りながら
……あの子……いつから杏寿郎さんの事を呼び捨てに…
私のいぬ間に、更に距離が縮んでいた杏寿郎さんと和の関係性に驚くほかなかった。
…見えてきた!
杏寿郎さんの邸が視界に入ると、私の脚は自然と速くなってしまった。そんな自分の行動にも、自分の杏寿郎さんへの気持ちを実感させられる。
杏寿郎さんがお館様に与えられたというその邸は炎柱だった頃のそれに比べるとそこまで大きなものではないらしい。けれどもその造り自体はとても立派なもので、隊士の鍛錬用に当てがわれたというのが納得いくような広い中庭を有していた。
門の前にたどり着いた私は、僅かに上がってしまっている息を整えるため
…ふぅ
と、一度息を吐く。そしてゆっくりと邸の門を潜り玄関に手を掛けた。その時
あれ?…杏寿郎さん、わざわざ玄関まで迎えにきてるのかな?
玄関扉のその向こう側に人の気配を感じた。その気配は、今朝感じた杏寿郎さんのそれとは少し異なっており、若干の違和感を感じはしたものの、手を掛けた勢いのままガラリと扉を開いてしまった。
「ただい…ま……」
"もどりました"と最後まで言う事が出来なかったのは、玄関を開けた先にいた杏寿郎さんが、私が知っている杏寿郎さんよりもかなり若返っていたからだ。
「……」
「……」
玄関の向こう側にいた小さな杏寿郎さんも、恐らく私に負けず劣らず驚いているようで、杏寿郎さんとよく似た夕陽色の綺麗な瞳を大きく見開いていた。