第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
「何故そのような質問をするのか聞いてもいいだろうか?」
「…っ…もう!本当に意地悪!わかってるくせに!!!」
半ば怒鳴るように言った私に
「わはは!わかっていても聞きたくなるというのが男の性というものだ!仕方あるまい!」
杏寿郎さんは、なだめるように私の頭をギュッと抱き寄せ、私の後頭部に顎をすり寄せながらそう言った。
「それじゃあ行ってきます」
「うむ。宇髄のところにも行くのだろう?気を付けて行ってくるように」
「はい。えっと…たぶん…」
私は玄関にある掛け時計に視線をやり
…蝶屋敷でしのぶさんの診察を受けて、少しお手伝いをさせてもらって…その後天元さんのところで訓練だから…
「3時から4時の間くらいには戻れると思います」
ここに戻ってこれそうな時間を杏寿郎さんに伝えた。
「承知した!宇髄の所を出る際は、必ず和を飛ばしてくれ」
「はい」
早朝稽古、朝食、朝食後のすったもんだを経て、私は私の時間を、杏寿郎さんは杏寿郎さんの時間を過ごす為、しばしの別れが訪れる。
…昨日からずっと一緒にいたから…ちょっと寂しいかも
そんな気持ちを胸の奥にぎゅっと押し込み
「時間に余裕があったら、食材の買い物もして来ちゃいますね」
「わかった!」
玄関をガラリと開け、杏寿郎さんの方を振り返った。すると杏寿郎さんも草履を履こうとしているところで
「わざわざ外まで来なくても、ここで大丈夫ですから」
私は、そうする必要はないと杏寿郎さんの行動に待ったをかけた。けれども
「いや。ちゃんと見送らせて欲しい」
杏寿郎さんは、さっと草履を引っ掛け私の横をすり抜けると、先に玄関を出て行ってしまった。
…もう…しょうがないなぁ
そんなことを思いながらも、私の頬は自然と緩み、胸は暖かな何かで包まれるように満たされたのだった。