第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
杏寿郎さんの言葉はさらに続くようで、一呼吸置いた後
「ここに住まないと言うのであれば一体どこに住むつもりだ?よもやあの長屋に住むなどと言い出すつもりではないな?」
杏寿郎さんは"まさかそんな"と言わんばかりの顔で私のそれをじっと見つめてきた。
…その…まさかだったんだけど…
あまりの杏寿郎さんの様子に、そう思ってはいたものの、口に出してしまった暁には何を言われるかわからないと思いギュッと上下の唇をくっつけた。
そんな杏寿郎さんの質問に答えたのは
「長屋ってこの間までこいつが住んでた所か?あそこならもう人がいっぱいで住めやしないぜ?」
相変わらずニヤニヤと腹立たしい笑みをその顔にはりつけている天元さんだった。その言葉に対する
「そうなんですか!?」「そうなのか!?」
私と杏寿郎さんの反応は似て非なるもので、思わず互いに顔を見合わせてしまった。
…あの長屋にも戻れない…となると…杏寿郎さんの邸にお世話になるしか選択肢はないのかな…いやでも…稽古を受けに来る隊士もいるのに、私なんかがいたら邪魔以外の何でもないような…
そんな私の考えが杏寿郎さんには透けて見えてしまっていたのか
「食事は作れないが他のことであればなるべく俺も手伝う!手の回らないところは信頼のおける隠に手伝ってもらう!だから俺の邸に共に住もう!」
杏寿郎さんが最後の一押しと言わんばかりに畳み掛けてきた。
「…で…でも…」
そこまで言われても素直に首を縦に振れずにいた私の背中を押してくれたのは
「鈴音が煉獄様のところでお世話になってくれたら私たちも安心なんだけど」
追加のおつまみを台所で作ってくれていた雛鶴さんに
「そうだよ。言っとくけど、あんたの信用度、まだ回復したわけじゃないからね?」
まきをさんに
「鈴音ちゃんみたいな子は、好きな人のそばに常にいて、その愛情をたっぷり受けた方がいいんです!」
須磨さんの3人だった。