第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
お館様になんてお礼をお伝えしようかな…
そんなこと考えていると
「よし!何はともあれ今日から俺の邸が鈴音の家だ!この邸までは少し距離があるが、毎日走り込みがてら通えば体力作りにも繋がるだろう!」
「…へ?」
何やら杏寿郎さんがとんでもないことを口走り、頭に浮かんできていたお館様への言葉たちがポーンと何処かへと飛んで行ってしまった。
…なに…?…杏寿郎さん…俺の邸が…私の家って…そう言った…?
そんな疑問が顔に出ていたらしく
「そんな顔をしてどうかしたか?」
杏寿郎さんが首を傾げ、不思議そうな顔をしながら私のそれを見てきた。
…その顔かわい…っ…じゃなくて!
「…っ私がいつ杏寿郎さんの邸に住むって言いました!?」
慌てて私がそう言うもの
「む?宇髄の所には住まないのだろう?ならば俺の所に来ない理由はないだろう?」
杏寿郎さんはさも不思議そうな顔でそう言った。
「…っ確かに音柱邸に住むのは…諦めます!私だって天元さん達の邪魔をするのは本意ではありません!だからって…杏寿郎さんの所に住むとは言ってません!」
「何故だ!?鈴音は俺と一緒にいたくはないのか!?」
私は、私に詰め寄りながらそう尋ねてくる杏寿郎さんを避けるように後ろに身体を反っていく。
「…っ一緒にいたくないわけじゃないですけど…杏寿郎さんと一つ屋根の下で暮らすなんて…色んな意味で身が持ちません!」
「…身が持たないねぇ…その理由を派手に教えてもらいてぇもんだ」
「もう!天元さんはチャチャを入れてこないでください!」
ニヤケ顔で話に入ってくる天元さんに思わず声が大きくなってしまう。
杏寿郎さんはそんな私の両肩にガシッと大きな両手のひらを置き、私の身体の向きを杏寿郎さんと向き合うようにグリンと変えてきた。
そして私の目を、じっと射抜くようなそれで見つめ
「俺は今まで散々鈴音に逃げられてきた!そんな君とようやく思いが通じ、君のそばにいる権利を手にした!だが君が強くなりたいと望み、俺よりも宇髄のそばにいることを選ぶのであれば、それが隊士として戦い続ける君の為故仕方があるまいと目を瞑った!」
酷く真剣な様子で言ってきた。