第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
それは天元さんも同じだったようで
「お前の頑固さを誰よりも知ってんのは親父さんだろうからなぁ。そう言う他ねぇだろうよ」
今日何度目かわからない呆れた表情を浮かべ、それでもどこか楽しそうな顔をしていた。
「む?そうなのか?」
「そうそう」
…なんだか話が脱線してばかりでなかなか進まないな…
そう思った私は
「それじゃあ、要を連れて行くということで話はまとまりましたね。あの…お館様のお屋敷に行く日は決まっているんですか?」
勝手に話に一区切りを打ち、ずっと気になっていたことを天元さんに尋ねた。
「それは明日お館様の鴉から連絡が来る予定になってる」
「…そうなんですね…」
天元さんから返って来たその答えに、私は視線を下げ、膝の上で作った2つのこぶしをジッと眺めた。それからぎゅっとその手に力を込めた後、顔を上げ再び天元さんへと視線を戻す。
天元さんはそんな私の視線に
「なんだよ。何か言いたげじゃん」
お猪口に入った酒をクッと飲みそう言った。
「……時間が許してくれるのなら…私、お館様にきちんとお礼と謝罪をさせてもらいたいです…」
あんな風に隊を辞めようとした私の戻ってくる場所など、本来はなくなっていてもおかしくはなかった。けれどもお館様が、公には私を"療養中"扱いにしてくれたからこそ、周りから何の非難も浴びることなくこうして再び隊士として籍を置くことを許されているのだ。
そんな私の言葉に
「そうだな。俺も改めてお館様に礼を言わねばならないとは思ったいた」
杏寿郎さんも真剣な声色をしながらそう言った。
「お前らが揃ってお館様に会いに行くことが1番の礼になるだろうからな。鴉が来たら時間をそれ用に取ってもらえるように伝えておいてやる」
天元さんのその言葉に
「…ありがとうございます」
心の中に残っていた罪悪感がほんの少し和らいだ気がした。