第12章 束の間の安息と初めましてと二度目まして※
天元さんはそんな私の言葉に目を大きく見開いた後
「お前、たまに察しがよすぎて気持ち悪ぃわ」
何とも言えない顔をしながらそう言った。
…気持ち悪いとは…失礼な…
そう思っていたのはもちろん私だけではなく
「宇髄っ!」
杏寿郎さんが先程、秘薬を覗き込んだ時以上にぐっと天元さんの方へと近づき、ギロリと天元さんを睨みつけていた。
「んな怒んなって!言葉の文だっての!話がややこしくなるから少し落ち着け!」
「杏寿郎さん。私は天元さんにそんな風に言われるのは慣れっこなので、全然気にしていませんから。話を続けましょう」
私はグッと身を乗り出している杏寿郎さんを引っ張る。
「…むぅ」
杏寿郎さんは"まだ納得していない"と言わんばかりの表情をしながら元の位置に戻った。天元さんは杏寿郎さんが腰掛けたのを確認すると、その視線を横にずらし、私の方へとそれを寄越した。
「秘薬の調合方は必ず手に入れる。お館様も、あいつらが好きそうな献上品っつうの?揃えてくれると言ってくれた」
天元さんは一瞬視線を下にずらした後、再び私のことをじっと見据え
「本来であれば里と関係のないお前を頼るのはお門違いだ。だが俺は…あいつらをあの里に連れて行くことはどうしても出来ねぇ。そうなると…連れて行くのはお前以外考えられねぇ」
厳しい表情を浮かべながらそう言った。もちろん私の答えは決まっている。
「…行きます。…いいえ、行かせてください」
私のその言葉に、天元さんの眉の端がピクリと動く。
「私は…今の状態だと、難しい任務には出れません。無理に出たとしても、周りの足を引っ張ってしまうことになるかもしれない。そうなってしまうより、私を上手く使ってくれる天元さんの力になれるのであれば…それ以上のことはありません」
「…そうか」
天元さんは静かにそう言った後、その視線を私の隣にいる杏寿郎さんへと移した。