第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
「…っわかりました!今夜は天元さんの家で食事を終えたら杏寿郎さんの邸に泊まります!だから音柱邸にはちゃんと行きましょう?」
私はなんとか頭を絞り、杏寿郎さんが納得してくれそうな案を絞り出した。すると杏寿郎さんはバッと私から身体を離し
「本当か!?」
目をキラキラとさせながらそう尋ねてきた。その表情に
…っ…かわいい…じゃない
私の胸はキュンと高鳴り、もしこの場に1人きりであったら悶え蹲りたいと思ってしまう程だった。
私は杏寿郎さんにバレないように
…ふぅ
と極小さく息を吐くと
「…本当です。でも、一晩だけですよ?」
上擦ってしまいそうになる声を抑えそう言った。
「うむ!楽しみだ!」
杏寿郎さんはそう言うと、スッと私の左側へと移動し、そのまま当たり前のように私の左手を取った。
「……駄目です。反対側に来てください」
抗議するようにそう言うも
「君が初めて俺の邸に上がってくれる。楽しみだ!」
「……聞いてます?」
私の言葉は杏寿郎さんの耳には届いていないようで(いや、聞こえないふりをしているのかもしれないが)、私の左手をギュッと握り、ズンズンと歩き始めてしまった。そんな姿に
……仕方なぁ
と思いながらも、口角がきゅっと上がるのを止めることができない私だった。
その後
"鈴音ー!!!!なんで和をおいていったのぉ!?私寂しかったのぉ!!"
…鴉ってそんなに涙が流れるのね
なんて思ってしまうほどの涙を溢しながら私の頭をつつきまくる和の猛攻を全て受け止め
"ごめんね…"
泣き疲れてゼェゼェしている和を優しく腕に抱いた。それから
"これ、お詫び…には全然足らないけど、和の好きな金平糖、たくさん買ってきたの。これで…許してくれない?また…私の相棒になって…?"
買ってきた金平糖を差し出すと
"やだぁぁぁ!これ、食べていいの?全部和のなのぉ!?"
先程の涙はなんだったのかと聞きたくなるほどの明るい様子でその両羽をバサバサと羽ばたかせたのだった。