第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※

「……どうしたの？」


そう聞きつつも善逸から手を離さず、私より少し上にある顔を見上げた。その直後


「君たちの姉弟愛は十分理解した。だがしかし、あまりにも長くくっつきすぎてはいないだろうか？」


背後からから聞こえてきたその声に、私は思わず成る程と1人心の中で納得した。それでもまだ善逸から手を離すことなく、首だけ振り返り


「…あのですね杏寿郎さん。善逸は私の弟弟子ですよ？そんな風に目くじら立てなくてもいいじゃないですか」


思わずそう言ってしまう。そんな私に同意するように


「そそそそうですよ！そんな怖い音…出すのやめて！」


善逸は全身を、そして声を震わせながらそう言った。　


…杏寿郎さん…いったいどんな音を出してるんだろう…？


私は内心、"善逸にやきもちを焼くなんてかわないいな"なんて事を思いながら杏寿郎さんの顔を見る。


「わかっている。だが嫌なものは嫌だ！」


"嫌なものは嫌だ"


その発言はひどく子どもじみて聞こえたが、そんな杏寿郎さんも可愛く見えてしまうのは惚れた弱みなのだろう。けれども実際問題、弟弟子と仲直りしているだけでやきもちを焼かれてしまっては困ってしまう部分もある。


「…じゃあね、聞きますけど…杏寿郎さん、確か恋柱様と師妹関係でしたよね？」

「ああそうだ」

「私が杏寿郎さんと恋柱様がくっついてるのを見て、"私の恋人にくっ付かないで下さい！"なんて言ったらどう思います？」


これを言えば杏寿郎さんは確実に引き下がるだろう。私はそう思っていた。けれども


「俺は甘露寺とくっついたりしない！まして君達のように抱き合ったりしない！！」


やはりそこまで聞き分けの良い相手ではなかった。


「…っだから！もしもの話です！想像してみて下さい！」

「起こり得もしないことを想像することは出来ない！」

「…っもう！相変わらず話の通じない人ですね！」

「とにかく離れてくれ！」

「嫌です！」







「どうでも良いけど…俺を巻き込まないでよぉぉぉお！」






私と杏寿郎さん、そして巻き込まれた善逸とのやり取りは

"いい加減にしてくれませんか？"

怒りを耐えた表情で胡蝶様が玄関にやってくるまで続いたのだった。