第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
「なにも言わずに…いなくなった…っ…善逸がそういうの…一番悲しむっていうの…知ってたのに」
善逸は私のその言葉にバッと顔を上げ
「俺がどれだけ心配したかわかる?どれだけ探したかわかる?せっかくまたこうして一緒に過ごせるようになったのに…たった一人のかわいい弟弟子だって言ってたじゃん。あれは嘘だったわけ?」
ほとんど息継ぎをする事なくそう言った後、私の顔にチラリと視線を寄越してくれた。けれどもまたすぐに、フイッと外されてしまう。
「…っ…」
そんな善逸の行動に、目の奥から急激に熱いものが込み上げてきた。そしてその後すぐ、まばたきもしていないと言うのに両目からてボロボロと涙がこぼれ落ちてしまった。
泣くことに何の意味もない
そもそも私に泣く権利なんてない
そう理解している筈なのに、杏寿郎さんの熱い炎で心の氷を溶かされてしまったあの時から、すっかり感情の制御が下手になった私は、ボロボロと溢れ落ちる涙を止めることが出来なかった。
「…っごめ…ごめんなさぁい…!」
子どものように泣きながら謝る私に、善逸は驚き、その焦茶色がかった目を大きく見開いた。それからぐにゃりと顔を歪め
「やだぁ!ごめんねぇ!もう良いから!怒らないから!姉ちゃんに泣かれると俺辛いから!お願いだからそんなに泣かないでぇぇぇえ!」
そう言いながら、善逸も私に負けないくらいボロボロと泣き始めた。
「ごめん…いくらでも謝るから…嫌いにならないで…」
善逸はぐしぐしと両手で目を擦りながら泣く私との距離を詰めると、私の身体をぎゅっとその腕の中に閉じ込めた。
「ならないよぉ!なるわけないじゃないのよぉ!」
「…ありがとう…善逸…大好き…っ…もう…絶対に…黙っていなくなったり…しないから…っ…何かあったら…1番に相談するから…」
そう言いながら、私も善逸の身体に腕を回し、私よりもすっかり大きくなってしまったその身体にギューっと強く抱きついた。
「俺も姉ちゃんが大好きだよぉぉお!!!」
そうしてしばらく、善逸と抱き合うようにしながら蝶屋敷の玄関で泣いていたが
「…っひぃぃぃい!!!」
バッと顔を上げた善逸が、私の身体から手を放し、私の手からも逃れようと暴れ出した。