第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
そして炭治郎君は
「伊之助行くぞ!」
「俺様を引っ張るんじゃねぇ紋次郎!」
伊之助君の腕を引っ張り屋敷の奥へと去っていった。その場に残ったのは、善逸と私の2人で
「……っ…」
…どうしよう…何から話せば…
色々考えてはいた筈なのに、いざ本人を目の前にすると、何から話せばいいのかわからなくなってしまい言葉が出てこない。そしてもちろん善逸から何か言ってくれる筈もなく、私と善逸を沈黙が包んだ。
ふぅぅぅう
気持ちを落ち着かせるように大きく息を吐き、ゆっくり善逸との物理的距離を縮めていく。
善逸の目の前で立ち止まり
「善逸…ごめんね」
そう言いながら、善逸の顔をゆっくりと覗き込むも、善逸は私の顔をじっと見返すだけで何も言葉を発してはくれない。
「…ごめん…ね…?」
震えそうになる声を抑えもう一度そう言ってみるも、善逸は先ほど同様ただ私に向けじっと無機質な視線を寄越してくるのみだ。
「…っ…お願い…なにか答えてよ」
善逸にそんな視線を向けられる事も、そんな態度を取られる事も初めてで、どうしていいかわからなかった。
けれども、心優しい善逸をそんな風にしてしまったのは他でもない私だ。罪悪感と、悲しさとぐちゃぐちゃに入り混じった感情で、目の奥がじんわりと熱くなって来てしまう。
…ううん。泣きたいのは善逸であって…私じゃない…
もう一歩前進し、善逸との距離を更につめ、その両手を取った。
「…ごめん…善逸…本当に…ごめん」
善逸の顔を覗き込みながら必死で謝罪を繰り返す私に対し
「それは何に対して謝ってるわけ?」
善逸は早口でそう言った。
「…っ…」
善逸が発したその声は、今まで私が聞いたことのあるそれの中で圧倒的に冷たく、その声色に、目の奥が更に熱くなる。