第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
その時
"伊之助様のおかえりだぁぁあ!"
聞き覚えのある、見た目に反して非常に野太い声が玄関の方から聞こえ、私はバッと椅子から立ち上がった。
伊之助君が帰ってきたっていうことは…もしかしたら…善逸も…?
そんな事を考えていると
"善逸!どうして止まるんだ!善逸もわかってるんだろう?この匂いは鈴音さんの匂いだ!鈴音さんが戻ってきてるんだ!"
そんな炭治郎君の声がしっかりと聞こえ、やはりそこに善逸もいるんだと確信を得た。
「胡蝶様!すみません…っ私、善逸の所に行かないと…」
「私の話はもう済んでいますので。どうぞ行って下さい」
「ありがとうございます!」
私は最期にもう一度胡蝶様に頭を下げ
「すみません!また後で」
「わかった」
杏寿郎さんにそう告げると、急ぎ、蝶屋敷の玄関の方へと走った。
蝶屋敷の玄関に辿り着くと、そこにはやはり想像していた通りの3人の姿があった。伊之助君は私の姿を確認すると
「あ!おいお前猫女!一体どこに隠れていやがった!この俺様の目を掻い潜ろうだなんて100万年早いんだよ!」
伊之助君が何やら騒いでいるが、騒ぐ伊之助君の向こう側に見えた善逸と、その背中を押している炭治郎君の姿が目に入り、大変申し訳ないが伊之助君の事を気にしている余裕はなかった。
「鈴音さん!元気そうで良かった!」
炭治郎君は善逸の背後からヒョイと顔を出し、私に向かって笑顔でそう言ってくれた。
「…色々心配かけちゃって…ごめんね」
「いいえ!鈴音さんがこうして元気に戻ってきてくれれば、俺は全然かまいません!でも…」
そう言いながら、炭治郎君は、未だにその場から動こうとしない善逸の顔にチラリと視線をやった。
「炭治郎君」
「はい!」
「悪いんだけど…善逸と、2人にしてもらっても良いかな?」
私がそうお願いすると
「もちろんです。善逸、いつまでも臍を曲げてないで、鈴音さんときちんと話をするんだぞ?」
炭治郎君はいかにも"長男"と言う言葉をこぼしながら、善逸の肩を優しくポンと一度叩いた。