第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
それに対する答えなんて、考えるまでもなくすぐに出てしまった。
「もちろんです。今度…善逸にでも頼んで、栗花落さんとお話しする時間を作ります」
……その為には…まずは善逸と話をすることが第一関門だけど
「そうですか…ありがとうございます」
そう言った胡蝶様の顔は、"師範"というよりも"姉"と言う方が相応しいような気がした。
「…あの、栗花落さんは好きな食べ物とかありますか?」
胡蝶様は私の突然の質問に一瞬驚いたように見えたものの
「はい。カナヲはラムネが好きなんです」
何の為に私がその質問をしたのかすぐに気がついてくれたようで、にっこりと笑みを浮かべながら答えてくれた。
「ラムネ…ですね。わかりました!それじゃあとびっきり美味しいラムネを探して買っておきます」
私が胡蝶様に向けそう言うと
「では俺も共に買おう!」
何故か杏寿郎さんも、酷く張り切った様子でそう言った。
「…ダメです。栗花落さんへの感謝の気持ちは、自分できちんと伝えるんですから。杏寿郎さんからはまた別の機会にお願いします!」
杏寿郎さんはその私の返事を聞き
「君は相変わらず冷たいな」
拗ねたような表情を浮かべそう言った。そんな杏寿郎さんを見た胡蝶様が
「…ふふっ…やはり仲がよろしいようで」
クスクスと笑いながらまたしてもそんな事を言ってくるものだから
「…っそんなこと…ありません…」
なんだかとても恥ずかしくなってしまい、肩に置かれ続けている杏寿郎さんの手をもじもじと身体を動かし振り払おうとした。けれども
「む!何をしているんだ?」
杏寿郎さんは離さないと言わんばかりに私に身体を寄せてきた。
「あらあら。いくら恋仲だからとは言え、私の前でイチャつくのはやめていただけないでしょうか?」
「…え!?…っ…あの…その…」
「わはは!すまない!」
私は胡蝶様にすっかり杏寿郎さんと恋仲である事が知られてしまっていることに驚き、思わず目を泳がせ動揺してしまうのだった。