第2章 脱兎の如く
そのまま須磨さんのされるがままになっていると
「須磨ぁ!あんたねぇ!天元様が待ってんでしょ!?連れて来いって言われたはずなのになにいつまでも喋ってんのさ!」
そう言いながら現れたのは、前髪部分だけが明るく、それ以外は暗い毛色という特徴的な髪の毛の女性だ。その人は顔に怒りを浮かべながらこちらに向け、物凄い速さでこちらに走ってくる。
そして到着するや否や
バシンッ
えぇぇぇぇぇ!?!?
須磨さんの頭を、容赦なくはたいた。
私はあまりの予想外の出来事に、ただ目を見開きながらその光景を見ていることしかできない。
「痛ぁぁぁい!まきをさんがぶったぁぁあ!天元さまぁぁあ!」
「その天元様が呼んでるって言ってんのよ!さっさとその子連れて来なさいよ!」
「だってだって凄くかわいいんですもん!それにですね!いくら遅いからってぶたなくてもいいじゃないですかぁ!まきをさんの乱暴者!」
「なんだってぇ!」
そう言って須磨さんに更なる一発を加えようとするまきをと呼ばれた女性。それを防ごうと、私から手を離し、飛んでくる手のひらを防ぐ須磨さん。
…どうしよう。私…忘れ…られてる?というか…止めた方が…いいの?
そう悩み狼狽える私の元に、
「二人ともいい加減にしなさい!天元様が待ってるし、荒山さんも困っているでしょう!」
もう一人、目元のほくろが特徴的な”黒髪美人”という言葉がぴったりの女性が慌てた様子でやって来た。いつの間にやら、この場には女性が3人集まっていた。
…皆さん…目のやり場に困る。
露出された長い手足。そして何よりも目がいっていしまうのは
胸の谷間が…3つ。
3人とも、私が今までの人生で相まみえてきた女性たちの中で、圧倒的に露出が多く、そして女性らしい身体付きをしていた。
黒髪美人さんが来ても、もみ合っている二人は全然気にする様子もなく
「大体ですね!まきをさんはいつも乱暴なんです!」
「あんたがいっつもそんなんだから悪いんでしょ!」
依然としてもみ合いは続いている。
「もぉ!いい加減にしてよ!」
黒髪美人さんはなんとか二人を引きはがそうと、果敢にも二人の間に割って入ろうとしている。