第2章 脱兎の如く
和も一緒になって私の頭に乗っていることが、私の異質さを余計に際立たせている。
もちろん辞めてほしいとお願いはした。けれども「…私は…だめなの?…わかった」なんて悲しそうに言われたら、慌てて引き留める他ない。和の、のほほんとした様子は、殺伐とした毎日を送る私にとってはものすごく癒しであるし、普段からのんびり屋さんではあるが仕事もきちんとこなしてくれる。
2匹と1羽と私は、そんな視線に耐えながら(耐えているのは私だけだが)、音柱様の待つ場所へと歩みを進めた。
「ここ…で良いの?」
数刻ほど歩き続けたどり着いたのは、静かで、人気の殆どない、綺麗な木花が植えられた普通の民家よりもかなり大きな屋敷だった。
ムキムキネズミ達は私の肩からピョンと飛び降りると
「…いや、誰も見てないし、普通に歩きなさいよ」
依然としてその筋肉を主張しながら屋敷の中へと消えていった。
「置いて…行かれちゃった」
せめて中まで案内して欲しかったな。
どうしたらいいんだろう、と悩みながら玄関を見つめていると、
「…っ!」
ガラッと音を立て、中から誰かがその扉を開いた。
中から出てきたのは青みかかった髪色と、それと同じ瞳の色を持ったとても可愛らしい容姿をした自分と同じ年齢位の女性だった。
「あぁあ!あなたが鈴音ちゃんですね!待ってたんですよぉ!」
そう言いながらその女性は、扉を開けっぱなしにしながら嬉しそうな様子でこちらに近寄ってくる。
私がそのとても人懐っこい様子に戸惑い、何も言えないでいるも、
「私はですね、須磨って言います!迷わずに来れましたか?来るのを楽しみにしていたんです!小柄でなんだか猫みたいで可愛いですね!私は犬よりも猫派で…」
私の手を、その両手でぎゅっと掴みながら機関銃のように喋り続ける須磨さんに
「…え…あ…はい…」
と返事にも成りえていない言葉を返すことしかできず、私の頭はさっそく混乱状態に陥っていた。