第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
私にとって杏寿郎さん、天元さん雛鶴さんまきをさん須磨さんと同じように大切な人物…弟弟子である黄色いタンポポのような頭の持ち主の話を、まだ聞けていなかった。
「…善逸は…どう…言っていましたか…?」
私のその問いに、杏寿郎さんは顔だけくるりとこちらに振り返る。
「我妻少年がどう言っていたか…そんなのは姉弟子である君なら容易に想像できるだろう?」
「…っ…」
杏寿郎さんのその言い方は些か意地悪にも聞こえるが、"あの善逸"に"あんな事"をしてしまったのだから仕方ない。
…泣いてたかな…怒って…たかな…うぅん、そんなのどっちでもいい…とにかく会ったらまず謝らなきゃ…
蝶屋敷に行けば蝶屋敷を拠点として過ごしている善逸に会う可能性は高い。善逸に会ったら、まず一番最初に謝ろうとあの街を出た時から決めていた。けれども、例え謝ったとしても、私と同じ様に親に捨てられた経験があると知っていながら善逸を置いて行った私を許してはくれないかもしれない。
…許してもらえるまで…何度でも謝ろう…
「…わかって…ます」
不安と罪悪感で小声になってしまった私に
「宇髄達に我妻少年、そして胡蝶。叱ってくれる相手がたくさんいて君は幸せものだな!」
杏寿郎さんはまるでその気持ちを吹き飛ばしてくれるような明るい声でそんなことを言ってくれた。
「……はい」
「では出発する」
私は走り出した杏寿郎さんの背中を再び追いかけた。
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「あらあら。最後にお会いした際、明日も来るようにとお伝えしたはずですが…随分とお久しぶりなような気がするのは私の気のせいでしょうか?」
診察室の扉を開けて胡蝶様と目が合うと、胡蝶様はそれはもう美しい笑顔を浮かべながらそう言った。
その笑顔は本当に、眩しさを感じるほど美しいのに
…っ…怖っ!
今まで向けられた誰のどの笑顔よりも恐怖を感じた。