第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
私は天元さんが何故そんな質問を杏寿郎さんにしたのかいまいちわからず、首を傾げその会話の動向を見守る。杏寿郎さんは腕を組み"…むぅ"と何かを考えるそぶりを見せた後
「正直に言ってしまえば、用が済んだ後は鈴音と2人きり俺の家で過ごそうと思っていた!だが鈴音本人がそれを望み、鈴音を好いてくれている宇髄の奥方の願いとあらば我慢するとしよう」
眉を下げ僅かに残念そうな顔をしながらそう言った。
…杏寿郎さん…そんな事を考えてくれてたんだ…
なんだか申し訳ないような気もしたが、杏寿郎さんと2人きり、杏寿郎さんの邸で過ごすのは流石にまだ緊張してしまうため、少し安心してしまう自分がいた。
「よっしゃ!なら煉獄でも飲める美味い酒用意しとくからよ、お前も今日はそいつと一緒にまたここに来い!」
「無論!初めからそのつもりだ!」
「そうと決まりゃ買い出しだ!お前ら買い出し行くぞ!」
天元さんはそう言いながらお金でも取りに向かったのか屋敷の奥へと行ってしまった。
「「はい!」」
雛鶴さんとまきをさんもそれに続くように部屋の奥へと向かって行き
「やったぁあ!宴会ですよ宴会!」
先程まであんなにも必死に私に抱きついていた須磨さんも、あっさりと私から離れ3人を追いかけて行ってしまう。
"こっち来る時鴉飛ばせよ〜"
なんて言う天元さんの大声がどこからともなく聞こえ
「「……」」
残された私と杏寿郎さんは、黙ったまましばらく互いを見合ってしまった。
「さて!そろそろ行こう!」
先に我を取り戻した杏寿郎さんに声を掛けられ
「…そうですね」
私は脱ぎ散らかしていた草履を履き杏寿郎さんの隣に並んだ。それから玄関を出て、音柱邸の門も出る。
「ここから蝶屋敷までそう遠くない。だが急ごう」
蝶屋敷のある方向を見ながらそう言った杏寿郎さんに
「はい」
私はそう返事をした。けれども走り出す前に
「あの…杏寿郎さん」
「どうした?」
私は杏寿郎さんにどうしても聞いておきたいことがあった。