第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
けれどもそれで止まる須磨さんとまきをさんじゃないことは、天元さん雛鶴さんまきをさん須磨さんの4人と比べたら関係の浅い私にすらわかっていた。
「私はあの時、ちゃんと鈴音ちゃんの口から直接聞きたかったんです!家族みたいに仲良しで…なのになのに!何にも言わずにいなくなっちゃうんだもん…鈴音ちゃんの馬鹿馬鹿馬鹿ぁ!うわぁぁぁぁん!」
とうとう声を出して泣き出した須磨さんに
「…っ…」
「須磨…」
まきをさんもそして雛鶴さんも何も言わなくなってしまった。
私は依然として私に抱きつき泣き続ける須磨さんの背中に腕を回し
ポンポンポンポン
と優しく背中を叩いてあげる。そんな私の行動を、雛鶴さんまきをさん、そして天元さんと杏寿郎さんも黙って見守ってくれていた。それをしばらく続けていると
…ヒッ…ヒック…
段々と落ち着きを取り戻してきたのか、須磨さんの泣き方は大泣きから啜り泣きに変わっていた。タイミングを見計らい
「…須磨さん」
須磨さんの名を呼ぶと、須磨さんはボロボロと涙が流れ続ける瞳を私に向けてくれる。
「あんないなくなり方をしてごめんなさい。…私もずっと皆さんに…須磨さんに会いたかった。この家が恋しかった」
「…本当ですか?」
「はい!私も、すぐにでも須磨さんに話を聞いてもらいたいです!だから、蝶屋敷での診察が終わったら…ここに戻って来てもいいですか?」
私がそう尋ねると、須磨さんの顔がパァッと明るくなり
「本当ですか!?絶対ですよぉ!?待ってますからね!?」
先程までの泣き顔が嘘のような明るい笑みを私に向けてくれた。そんな私と須磨さんのやり取りに一番最初に反応したのは
「あいつ、あんなこと言ってるけどいいのか?」
天元さんだった。天元さんの視線は杏寿郎さんの方へと向いており、先ほどの質問が雛鶴さんやまきをさんへと投げかけられたのではなく、杏寿郎さんへ向けられたものだと言うことが窺い知れる。