第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
「あぁ。鈴音が先にここに来たいと言ってな。耳の具合は気になるところではあるが、彼女の気持ちを尊重した」
「成る程な。ほら!こいつらこれから蝶屋敷に行くんだと。一旦そいつ解放してやれ」
そんな天元さんの言葉に、雛鶴さんとまきをさんは若干名残惜しげではあったものの私からスッと腕を離してくれた。けれども
「嫌です!私はまだ鈴音ちゃんとこうしていたいです!やっと再会出来たのにぃぃい!」
須磨さんは私にピッタリと張り付いたまま離れようとしてくれない。そんな須磨さんに
「ちょっとあんた!わがまま言ってんじゃないよ!早く離れな!」
「気持ちはわかるけど、鈴音の耳の方が大切でしょう?」
まきをさんは私に回っている須磨さんの手を引っ張りながら、雛鶴さんは須磨さんの両肩にそっとその手を添えながら言った。
「わかってます!鈴音ちゃんの耳はとっても大切です!でもでも…まだ来たばっかりなのに、もう行っちゃうなんてあんまりですっ!私、鈴音ちゃんから煉獄様とのお話聞くの楽しみにしてたんです!なのに私に…私たちに何の相談もなしに突然いなくなっちゃうんですもん!どうして真っ先に相談しにきてくれなかったんですかぁぁあ!?」
話している間に須磨さんの涙と鼻水はさらにその量を増していき、そんな姿を見ている間に私の涙はすっかりと引っ込んでしまった。
「あんたねぇ!そんなん鈴音から態々聞かなくっても鈴音の性格を考えればわかるって自分で言ってたでしょう!?」
「言いました!言いましたけど本人から言われるのと言われないのじゃ全然違うんです!」
段々と激しくなっていく須磨さんとまきをさんの言い合いに
…このやり取りも…なんだか懐かしいな
なんて呑気なことを考える私の一方で
「ちょっと2人とも落ち着いて!煉獄様もいらっしゃるのよ…!」
雛鶴さんは興奮していく2人をなんとか宥めようとしていた。