第11章 さよなら、ごめんなさい、そしてただいま※
相手を見つけたいが、決してこちらには気が付かれたくない。15分の時間差を埋めるように可能な限り速く、可能な限り気配を殺しながら1本道が見える木々の枝を跳び移るようにしながら移動していく。
すると
…人の気配だ…!
人の気配を察知した。けれどもそれとほぼ同時に
…っ…ちょっと待って…この気配は……鬼っ!?
鬼の気配も察知してしまった。
鬼の気配は極小さなもので、私が目的とする人物が気配に敏感でない限り、その存在に気が付くことは困難だと思われた。
…でも…もしここで呼吸を使たっら…私の存在に気が付かれちゃうかもしれない…感じる気配からして強くはなさそうだけど…速さはまぁまぁある…雷の方じゃないと…たぶん一発じゃ仕留められない…
けれども、雷の呼吸を使うと、原理は未だにわからないが雷鳴が響き渡る。そうなれば、型を放った人物が私であることは特定されなくとも、”雷の呼吸を扱う隊士がいた”と言うことは間違いなく気づかれてしまう。
…どうしたら…っ!
そう悩んでいる間に、鬼の気配が、その目的の人物へとぐっと急激に近づいた。そうなってしまえばもう選択肢は一つ。
放っておくことなんて…できるわけない!
「……雷の呼吸壱ノ型…っ霹靂一閃!!!」
木の枝を全てよけながらまっすぐと鬼へと向かい
ズシャッ
「ヒギヤァァァァァ!」
「…っ…なんだ!?!?!?」
その頸を一撃で跳ねた。
スタッと右足だけ地面へと着地し、そのままもう一度霹靂一閃を放つような力で跳躍し森の木々の中へと入り気配を殺した。
木の陰に隠れ、朽ちていく鬼の顔と胴体をじっとみている男の様子を観察する。
…こっち…向かないかな…
私の位置からは男の背中しか見ることができず、その顔を確認することが出来ない。けれどもここで動いてしまえば、忍の訓練を受けた私とて、葉っぱに身体のどこかが当たってしまう。そうすれば必然的に葉音がし、相手に私の居場所がバレる危険性がある。
…なにか…メモしてる…?…あ…だめ…行っちゃう…!
結局そのまま男の顔を確認出来ないまま走り去られてしまった。わかったことといえば、その走り方からして隊士ではない…と言うこと位だった。